ミリンダ王の問い(3/4)
自己はない(名前の問い、車のたとえ)

さて尊者ナーガセーナは、ミリンダ王にこれを言った。
「大王よ、あなたは実に王族で繊細に育ち、非常に繊細でおられます。大王よ、そのあなたが真昼間に、熱せられた土地や熱い砂の上を、固い小石や砂利や砂を踏みつけて、徒歩で来たのなら、足は痛み身体は疲れ心は病み苦痛を伴う身体の意識が起きます。あなたは徒歩で来たのですか、それとも乗り物でですか?」と。
(ミ)「尊者よ、私は徒歩で来たのではなく、車で来ました」と。
(ナ)「大王よ、もしあなたが車で来たのなら、車を私に告げてください。大王よ、いったい轅(ながえ)が車なのですか」と。
(ミ)「いいえ、尊者よ」と。
(ナ)「車軸が車なのですか」と。
(ミ)「いいえ、尊者よ」と。
(ナ)「車輪が…車のかごが…車の杖が…くびきが…手綱が…むちが車なのですか」と。
(ミ)「いいえ、尊者よ」と。
(ナ)「大王よ、いったい轅および車軸および車輪および車のかごおよび車の杖およびくびきおよび手綱およびむちが車なのですか」と。
(ミ)「いいえ、尊者よ」と。
(ナ)「大王よ、それなら轅・車軸・車輪・車のかご・車の杖・くびき・手綱・むち以外のものが車なのですか」と。
(ミ)「いいえ、尊者よ」と。
(ナ)「大王よ、それなら私は質問しても質問しても車を発見できません。大王よ、いったい車とは音声だけのことなのですか。それならここにある車は何なのですか。大王よ、あなたは偽って『車はない』とウソの言葉を話しているのですか。大王よ、あなたはインド全体の王であるのに、何を怖れて偽って言うのですか。尊者たちよ、500人のギリシア人と80000人の乞食修行者たちは私のいうことを聞け。このミリンダ王はこう言った。『私は車で来ました』と。『大王よ、もしあなたが車で来たのなら、車を私に告げてください』と言われて、『車を用意できない』と。これを賞賛することがはたして有益かどうか」


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