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ミリンダ王の問い(2/4)
自己はない(名前の問い、車のたとえ)
さてミリンダ王は、尊者ナーガセーナにこれを言った。
「尊者ナーガセーナよ、もし自己が発見されないならば、それでは誰があなたがたに法衣や乞食の食物や寝具や医薬品や必需品を与えるのですか。誰がそれを享受するのですか。誰が道徳を守るのですか。誰が修行を実践するのですか。誰が生物を殺すのですか。誰が与えられないものを取るのですか。誰が姦淫をなすのですか。誰が偽って話すのですか。誰が酒を飲むのですか。誰が五無間業をなすのですか。それゆえによいことはなく、よくないことはなく、よいことやよくないことを、するものもさせるものもなく、善行や悪行の行為の結果である報いはありません。尊師ナーガセーナよ、もしあなたを殺すものがいても、彼の殺生もありません。尊師ナーガセーナよ、あなたには師匠もなく戒を授ける教師もなく具足戒もありません。あなたが『大王よ、同輩の僧たちは私をナーガセーナと呼びます』と言うなら、この場合のナーガセーナとは誰なのですか。尊師よ、いったい髪がナーガセーナなのですか」と。
(ナーガセーナ)「いいえ、大王よ」と。
(ミ)「体毛がナーガセーナなのですか」と。
(ナ)「いいえ、大王よ」と。
(ミ)「爪…(くりかえし)…、歯、皮膚、筋肉、腱、骨、骨髄、腎臓、心臓、肝臓、肋膜、脾臓、肺、腸、腸間膜、胃、大便、胆汁、痰、膿、血液、汗、脂肪、涙、リンパ、唾液、鼻汁、関節滑液、小便、頭における脳が、ナーガセーナなのですか」と。
(ナ)「いいえ、大王よ」と。
(ミ)「尊師よ、いったい物質がナーガセーナなのですか」と。
(ナ)「いいえ、大王よ」と。
(ミ)「感受作用…概念…構成…意識がナーガセーナなのですか」と。
(ナ)「いいえ、大王よ」と。
(ミ)「尊者よ、それなら物質および感受作用および概念および構成および意識がナーガセーナなのですか」と。
(ナ)「いいえ、大王よ」と。
(ミ)「尊者よ、それなら物質・感受作用・概念・構成・意識以外のものがナーガセーナなのですか」と。
(ナ)「いいえ、大王よ」と。
(ミ)「尊者よ、それなら私は質問しても質問してもナーガセーナを発見できません。尊者よ、いったいナーガセーナとは音声だけのことなのですか。それならここにいるナーガセーナは誰なのですか。あなたは偽って『ナーガセーナはいない』とウソの言葉を話しているのですか」と。
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