[サンスクリットページ雑感集・技術情報]

勉強法−文字について

Since 2004/2/26 Last Updated 2004/3/6


 まんどぅーかは朝鮮語の勉強の歴史も長く、韓国にもちょくちょく行く。 この朝鮮語というやつはサンスクリットなみに連声規則がいろいろあるんだが、 サンスクリットと違うところは、文字で書くときは連声前の形で書いて、 読むときに頭の中で連声規則を適用しながら読んでいくというところ。 だからつづりと発音が違うわけだ。 でも、ハングルのシステムの中にこの朝鮮語の連声規則がうまーく取り込まれていて、なれると反射的に正しく読めるようになる(というよりそういう境地に達しないと一人前といえない)。 人工的に言語学的に作られた文字だから当たり前かもしれないけど、 なかなかうまくできてるなと思う。
 しかし世界の多くの言語の文字は、必ずしもその言語の特徴にマッチしてるとはいえない。 たとえばこれもまんどぅーかが勉強しているウルドゥー語は、 本来母音表記が必要なのに、母音表記が苦手なアラビア文字で書かれる。 イス(「これ」の斜格)とウス(「あれ」の斜格)がおんなじスペルになっちまうんだもんな。 こんなの不便だと思うのにイスラムの国はアラビア文字に思い入れがあるよね。 しかもあの流れるようなナスターリーク体にこだわるのは尋常じゃないなあ。
 日本語だって人のこといえない。 いや、ここで問題にしようとするのは、 漢字を使って音読み訓読みと複雑な読み方してることじゃない。 梅棹忠夫が『実戦・世界言語紀行』(岩波新書)の最後のほうで書いてたことだけど、 日本語は本来、ローマ字のような文字のほうが合う。 動詞の活用なんかローマ字を使うとすっきり簡潔に記述できるのに、音節文字なんか使ってるから、カ行五段活用、ガ行五段活用、サ行五段活用…とわけなきゃいけない。 カナは実は日本語にはあんまりふさわしくないのかもしれないってわけ。

 で、やっとサンスクリットの話に入る。
 サンスクリットはデーヴァナーガリー文字で書かれるのが本来だが、 ローマ字に転写してもちゃんと復元できることもあって、ローマ字に転写されることも多い。 もっとも、論文とかじゃなくて普通の文章はデーヴァナーガリー文字で書かれてるし、 アプテの辞書とか、MWの英梵辞書はデーヴァナーガリーだけだから、 ローマ字だけで勉強してるとあわてることになる。
 ただ、だからといって最初からデーヴァナーガリーで勉強するのはいかがなものか。
 サンスクリットのあの複雑怪奇な連声規則や語形変化は、 デーヴァナーガリーのような音節文字で書くと余計に複雑さを増してしまう。 一通り文法を終えるまではローマ字でしっかり頭の中にたたきこむようにして、 リーダー教材に入ってから少しずつデーヴァナーガリーに馴れていくというので十分だし、 またそうすべきだと思うんですけどね。
 学習書の中には最初からデーヴァナーガリーでがんがん行くものもある。 特にヨーロッパで出たものにはそういうのが多いし、またそういう方針をほめる意見もあるけど、 私はやめたほうがいい気がするな。
 サンスクリットはデーヴァナーガリーで書くと決まったわけではなく、 歴史的にもさまざまな文字で書かれてるし、 パーリ語みたいに東南アジアでは別の文字で書かれる場合もある。 だいたい論文ではローマ字表記も多いんだから、 ローマ字だってサンスクリットの書き方の立派な一つだと思うけどね。


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