アオリスト


    B. 現在組織以外

    語根と語根》

  1. 現在組織以外、および分詞、不定詞、絶対詞では、 子音やを除く半母音の語尾を、 直接語根につけるものもあります(語根)が、 語幹のおわりに(まれには)をつけた上で語尾をつけるもの(語根)も多いです。 (破る)の能動態未来単数3人称は、 不定詞は。 しかし(落ちる)はを加えて語幹をとし、 能動態未来単数3人称は、不定詞は(とる)の能動態未来単数3人称は、不定詞はです。

    1. アオリスト組織

  2. アオリスト(aorist)は、 単純アオリスト」(simple aorist)と 「アオリスト」(sigmatic aorist)の2つに分かれます。 人称語尾は第二次語尾を用い、加増音を語根の前につけます (→119120参照)。

    単純アオリスト

  3. 単純アオリストには、 語根アオリスト」(root aorist)、 「アオリスト(語幹アオリスト)」(thematic aorist)、 「重複アオリスト」(reduplicated aorist)の三種類があります。

    《語根アオリスト》

  4. 語根アオリストは、 語根に直接語尾をつけます。 このアオリストはで終わる語根またはの能動態にしか用いられず、 反射態などで用いられることはほとんどありません (→変化表)。
     反射態では、 (置く)の単数2人称と3人称(この項目以下同)が(立つ)が(する)が(死ぬ)がですが、 通常これらは、アオリスト(→こちら)の反射態と説明されています。

    アオリスト》

  5. アオリスト(語幹アオリスト)は、 語根にを加えて語尾をつけます。 (塗る)の能動態(単数1人称。この項以下同)は、反射態は。 直説法過去とちっとも変わらないようですが、この語の直説法過去は、 能動態単数1人称は、反射態はでした (→124の16)。 (落ちる)のアオリストは能 (直説法過去は能 (→124の17))。 (命令する)のアオリストは能 (直説法過去は能 (→136))。
     語形変化は直説法過去と同じです (→変化表)。

    《重複アオリスト》

  6. 重複アオリストの形を最も多く用いるのは10類の動詞、使役動詞、名詞起源動詞です。 まず、これらの動詞の語幹のを取り去ります (→122の備考)。 重複音節と語根音節はは原則として音節の長さを変えます。 もし語根が中間にをもつとき、 またはで終わるときは、 多くはまたはを重複音節の母音とします。 あとの語尾変化は157(アオリスト)と同じです (→変化表)。
     (盗む)のアオリスト能動態単数1人称(この項以下同)は(数える。現在語幹は)はの使役動詞(救う。使役動詞は能動態単数3人称の形。この項以下同)はの使役動詞(導かせる)はの使役動詞(結びつける)はの使役動詞(置く)は
  7. (失う)のアオリスト能動態単数1人称(この項以下同)は (→176参照)、 (落ちる)は(言う)は

    アオリスト

    アオリスト》

  8. アオリストは強語幹(長音階(ヴリッディ)母音)、中語幹(標準階(グナ)母音)、弱語幹の3つを持ちます。 語根に直接をつける「アオリスト」(athematic aorist)、 、まれにはをつけた語根にをつける「アオリスト」(athematic aorist)、 語根にをつける「アオリスト」(aorist)、 語根にをつける「アオリスト」(aorist)の四種類があります。
  9. アオリストの母音は能動態では長音階(ヴリッディ)となります。 反射態では、で終わる語根は標準階(グナ)となり、 または子音で終わる語根は弱音階です。
     (聞く)のアオリスト単数1人称は能(する)の単1は能(見る)の能単3は (→7)、 (わける)は能
     またはで始まる語尾の直前にあるは、 鼻音以外の子音の直後にある場合は除かれてしまいます。 の能為複2はではなくです。 同様に(投げる)はとなります。 しかし(思う)の反単3は (→44)、 (する)の能複2はです。
     の前にあるは濁音のzになって消滅します。 以外の母音の次のは反舌音に変化し (→47) そのためにその次のに変化して (→43)、 そのは消滅します。 (する)は(導く)はとなります。
  10. (導く)の変化は次のとおりです (→変化表)。
    備考 単2、単3、複3の形に注意。

    アオリスト》

  11. アオリストは母音で終わる語根のときは能動態で長音階(ヴリッディ)、 反射態では標準階(グナ)になります。 (切断する)の単1は能+単子音で終わる語根は能動態では任意に長音階(ヴリッディ)になります。 (言う)は必ず長音階(ヴリッディ)になります。 (握る)の語幹はです。  以外の母音を持つ語根は能動態、反射態ともに標準階(グナ)になります。 (学ぶ)の能単3はまたはのみ。 のみ、反射態は(悟る)は能
     変化は162(アオリスト)と同じです (→変化表)。
    備考 反複2ではにならないことがあります (→161)。

    アオリスト》

  12. アオリストは能動態の形しかありません。 で終わる語根の動詞、またはで終わるがで終わる語根同様に変化する動詞に用いられます。 (行く)、(飽きる)など (→変化表)。

    アオリスト》

  13. アオリスト以外の母音をもちで終わる語根にしか用いられません。 母音はつねに弱音階です。 変化は第1種変化の直説法過去と同じですが、 反単1は、反両2は、反両3はを用います (示す)、(隠れる)など (→変化表)。

    祈願法

  14. アオリスト組織に属する願望法を祈願法(precative。または希求法)といいます。 使われる語は次のとおりです。 (ある)→能単2(あなたがあらんことを。以下訳略)能単3(与える)→能単3(守る)→能単3(立つ)→能単2(する)→能単3(示す)→能単3
     また次のような特殊な形があります。 →能両2能複3(言う)→能複2→能複3(作る)→反単3
     (→変化表)。