名詞起源動詞・準動詞
9. 名詞起源動詞
-
名詞や形容詞の語幹は、人称語尾をつけて動詞の語幹として用いられることがあります。
(芽)は(それは芽を出す)、
(鏡)は(彼は鏡である)、
(蓮)は(彼は蓮のようだ)。
(敵)は(彼は敵となる)。
しかしたいていは、名詞・形容詞の語幹に、あるいはまれにという接尾語をつけて、
能動態また反射態で第一種活用法に準じて変化します。
その意味は「その名詞・形容詞があらわすものを作る、〜がある、〜となる、〜がほしい」、
または「その名詞・形容詞の動作をする、〜のように見える」というものです。
(長い)は、(躊躇する、猶予する)、
(混ざった)は(混ぜる)、
(蓮の花)は(蓮の花のようだ)、
(苦行)は(苦行をおさめる)、
(子)は(子がほしい)、
(牝牛)は(牝牛がほしい)、
(王)は(王のようなふるまいをする)、
(三界)は(三界となる)。
10. 準動詞
A. 分詞(動詞から派生した形容詞)
《現在分詞、未来分詞、完了分詞》
- 接尾辞(強語形は)は、
現在(→122〜)語幹、
未来(→180)語幹につけられたときは、
現在分詞と未来分詞の能動態を作ります。
第2種活用(2、3、5、7、8、9類)では現在では弱語幹を用います。
重複語幹(124の19を除く)では弱語形だけ
(→78〜79)になります。
、
、
、
、
、
((ある)から)、
((殺す)から。→86)、
(→136)、
、
、
、
、
、
。
- 接尾辞
(→45)は第1種活用に属する動詞(1、4、6、10類)の語幹から反射態の現在分詞を作ります。
またすべての動詞の反射態未来分詞を作り、
さらにすべての動詞の受動態現在分詞、受動態未来分詞を作ります。
、
、
、
、
、
、
、
(←)、
(←。→189)、
(←。→191)、
(→197)。
- 接尾辞
(→45)は後のの上にアクセントがあり
(第3類動詞(→140を除く))、
第2種活用に属する動詞(2、3、5、7、8、9類)の弱語幹から反射態の現在分詞を作ります。
またすべての動詞の反射態完了分詞(受動態完了分詞と同一)を作ります。
、
、
、
、
、
、
、
(←)、
(→176)。
語根(座る)の反射態現在分詞は不規則でです。
- アクセントを持つ(強語幹は、中語幹は、弱語幹は)は、
完了の弱語幹(171、170、178に注意)に接続して、
能動態完了分詞を作ります。
は、
は、
は、
は、
は、
は、
(知る)は。
変化はこちら)。
- はまたはであり、
男性・中性単数具格は。
はまたは。
はまたは。
(得る)はまたは。
(入る)はまたは。
《過去(受動)分詞》
- アクセントを持つ接尾辞とは過去受動分詞
(本サイトでは省略して「過去分詞」という)を作ります。
特に、他動詞に加えられたときは過去受動の意味になりますが、
自動詞に加えられたときには単なる過去の意味になります。
は弱語根またはをつけた弱語幹につけられます。
第10類動詞および使役動詞では語幹のをとり、をつけてからつけられます。
語根の母音は通常は標準階(グナ)になり、
まれには(落ちる)→のように長音階(ヴリッディ)化し、
または(考える)→のようにそのままの場合もあります。
(勝つ)→、
(導く)→、
(供える)→、
(する)→、
(得る)→(→42)、
(降る)→、
(盗む)→、
(悟る)→です。
(握る)は不規則でとなります。
以下、不規則な過去分詞をいくつかあげます。
-
(供える)→(→41)、
(話す)→(→175)、
(説く)→、
(播く)→、
(過ごす)→、
(眠る)→、
()(呼ぶ)→。
-
(問う)→、
(あぶる)→、
(貫く)→、
(命じる)→。
-
(かむ)→、
(しばる)→、
(著す)→、
(こわれる)→。
-
(傷つける)→、
(行く)→、
(広げる)→、
(かがむ)→、
(思う)→、
(制する)→、
(喜ぶ)→、
(殺す)→。
-
(歌う)→、
(置く)→、
(飲む)→、
(量る)→、
(研ぐ)→、
(決心する)→、
(立つ、とどまる)→。
-
(燃える)→、
(愛する)→、
(生長する)→、
(なめる)→、
(運ぶ)→、
(堪える)→、
(結ぶ)→、
(迷う)→(可憐な)、(愚鈍な)(→48の備考1)。
-
(掘る)→、
(生まれる)→。
-
(愛する)→、
(制御する)→、
(さまよう)→、
(静まる)→、
(疲れる)→。
-
(与える)→。
ただし接頭辞(→233)とともに用いられたときにはすなわちとなる。
-
(→45)は必ず直接弱語根につけられます。
これが使われるのは次の場合です。
- 母音で終わる、特にで終わるいくつかの語根。
語末のはとなり、はとなり、唇音の次ではとなります。
(こわれる)→、
(付く、執着する)→、
(絶つ)→、
(去る)→、
(散らす)→、
(老いる)→、
(越える)→、
(満たす)→、
(破る)→、
(敷く)→。
- やで終わるいくつかの語根。
(着く)→、
(破る)→、
(曲がる)→、
(沈む)→、
(激動する)→。
- で終わるたいていの語根。
(断つ)→、
(推す)→、
(落ちる)→、
(破る)→、
(得る)→、
(座る)→。
《過去能動分詞》
- 接尾辞をまたはで終わる過去分詞に加えると、
過去能動分詞になります。
(した)
(見た)
(断った)。
変化は81のとおりです
(直接変化表をたどるならこちら)。
《動詞的形容詞(未来受動分詞)》
- 接尾辞、、は動詞的形容詞(未来受動分詞)(「〜なされるべき、〜なされるだろう」)を作ります。
(にアクセントをつけるか、もしくはを低く発音します)は、
標準階(グナ)化した語根または、それにをつけた語幹につけられます。
(勝つ)→、
(用いる)→、
(する)→、
(なる)→、
(盗む)→、
(握る)→。
接尾辞(→45)はたいてい標準階(グナ)化した語根につけられます。
(積む)→、
(聞く)→、
(する)→、
(考える)→。
接尾辞は、標準階(グナ)化または長音階(ヴリッディ)化した、アクセントをもつ語根につけられます。
で終わる語根はそのをに変えます。
(与える)→、
(飲む)→、
(勝つ)→、
(なる)→または、
(する)→、
(解く)→、
(話す)→。
しかし(得る)→。
B. 不定詞および絶対詞
《不定詞》
- 不定詞(infinitive)の接尾辞はであり、
標準階(グナ)化した語根または、それにをつけた語幹につけます。
さらに格変化などをすることはありません。
アクセントは語根にあります。
不定詞は「〜するため、〜すること」などの意味を持ち、
多くは能力(〜できる、〜にふさわしい)、
意志(〜したい)などの意味を表す動詞や形容詞とともに用いられます。
(与える)→、
(勝つ)→、
(なる)→、
(する)→、
(つなぐ)→、
(見る)→、
(行く)→(→44)、
(盗む)→、
(握る)→、
(越す)→または。
また不定詞は、、などの名詞とともに、
所有複合語(→245)を形成することがあります。
このときは最後のが消えます。
(眠りを欲している)、
(話す気がある、話したがる)。
《絶対詞(絶対分詞)》
- アクセントをもった接尾辞は、
単純の(つまり接頭辞や副詞などを何もつけない)弱語根、
あるいはそれにだけをつけた語幹について、
絶対詞(absolutive。絶対分詞)を作ります。
それ以上の格変化などはしません。
絶対詞は、「〜して、〜してから」などと訳し、
同一の動作主が2つの動作をするときに、後の動作に先行してする動作を表します。
は214で説明した過去分詞のの前と同じ形につけることになります。
(供える)→、
(言う)→、
(過ごす)→、
(眠る)→、
(問う)→、
(しばる)→、
(行く)→、
(思う)→、
(置く)→、
(飲む)→、
(立つ)→、
(燃える)→、
(なめる)→、
(掘る)→または、
(さまよう)→、
(与える)→、
(なる)→、
(握る)→。
第10類動詞、使役動詞、で終わる名詞起源動詞は、
をに変えてをつけます。
(盗む)→、
(見る)の使役動詞→。
- 接尾辞は、接頭辞、副詞、名詞をつけた弱語根につけて絶対詞を作ります。
で終わる語根はその形を変えません。
で終わる語根はそれをに、唇音の次ではに変わります。
短母音で終わる語根にはをつけます。
アクセントは語根にあります。
(告白する)→、
(会う)→、
(入る)→、
(満ちる)→、
(取る)→、
(飾る)→、
(死ぬ)→、
(服従させる)→、
(息吹く)→。
備考 否定辞、を加えただけの場合は、
ではなくを用います。(なくて)。
- (行く)、
(かがむ)、(拘束する)、(喜ぶ)、(思う)のような、
またはで終わる語根は、
そのまたはをとってを加えることで絶対詞を作ることもできます。
(担ぐ)、(殺す)は必ずこの方法でなければなりません。
(来る)→または、
(あなどる)→または、
(担ぐ)→のみ、
(撲殺する)→のみ、
(〜を掘る)→または、
(〜から生まれる)→または。
- 第10類動詞およびそれと同形の動詞(使役動詞、名詞起源動詞)の語根は、
その語根の母音が音律上(prosodically)短いときは、語幹にをつけます。
の使役動詞(集める)→、
しかしの使役動詞(覚ます)→、
(聞く)→。
- 接尾辞もまた一種の絶対詞を作ります。
この接尾辞の直前の語根の母音は、
受動態アオリスト単数3人称(193)と同様になります。
(積む)→、
(する)→、
(知る)→、
(与える)→。
まんどぅーかのコメント
- 原著では215が欠番です。
214(過去分詞)の説明は非常に長く、ととに分かれているのですが、
原著はを215にする予定で番号をつけるのを忘れてしまったのでしょう。
ここではを215としておきます。
- 原著では不定詞と絶対詞の意味用法がまったく説明されておらず、
わずかに表題部分に「動詞状名詞−不定法は業格、絶待法は具格」とあるだけなので、
少々補いました。