[ウルドゥー語/ヒンディー語ページ文法超特急・5]

動詞の変化

Since 2004/5/2 Last Updated 2006/7/4


     サンスクリットやパーリ語の複雑怪奇な動詞の変化からは想像もつかないほど、ウルドゥー語/ヒンディー語の動詞の変化は簡略化されています。英語の動詞の変化よりも簡単かもしれません。そのかわり、動詞を組み合わせて多様な表現をするのが特徴です。
     注意:以下の表で、2人称単数とは、2人称複数とはをいいます。2人称敬称代名詞のは文法的には3人称複数扱いになることに注意してください。

  1. コピュラ動詞
    1.  英語のbe動詞にあたるは、単に「〜である」「〜がある」という意味を表わすだけでなく、他の動詞のさまざまな形と結びついて多様な表現を表わします。ヒンディー語/ウルドゥー語の文法書ではこののことを「コピュラ動詞」(コピュラ=連結詞、繋辞)といいます。このコピュラ動詞には、現在形と過去形と未来形があり、現在形は主語の人称と数、過去形は主語の性と数に従って変化します。未来形は主語の人称と性と数に従って変化しますが、一般動詞と共通する部分が多いのでそちらで説明します。また、「〜である」「〜がある」「〜になる」という意味の動詞としての自体にはそれ以外の変化形もありますが、それらもやはり一般動詞のところで述べることとします。

    2. 現在形
    3. 主語の人称と数にしたがって変化します。
       単数複数
      1人称
      2人称
      3人称

    4. 過去形
    5. 主語の性と数に従って変化します。その変化は例によってなので、動詞というより形容詞的変化といえます。もっとも女性複数がとなる点が形容詞とは異なります。
      男性単数男性複数女性単数女性複数

  2. 一般動詞
    1. 語幹・不定詞・分詞
      1.  ヒンディー語/ウルドゥー語の辞書では動詞はすべてをつけた形で載っています。この形を不定詞といい、このを抜かした形を語幹といいます。動詞はこの語幹にいろいろな語尾をつける形で変化していきますが、ヒンディー語/ウルドゥー語の一般動詞の変化のほとんどは、分詞という、動詞から派生した形容詞としての変化になります。分詞は形容詞ですから、その変化は例によって、という形になるので、非常に単純でわかりやすくなっています。ただし、女性複数形が鼻母音化することに注意してください。
         なお、現在分詞の女性複数形は、この後にコピュラ動詞が来る場合は、鼻母音化せず、単数形と同じとなります。
         不定詞は名詞として用いられた場合は男性名詞扱いになります。
         語幹の形はそのまま絶対分詞(「〜して…」という意味)としても用いられます。
      2. 語幹が母音で終わる動詞
      3. (食べる)
         男性単数男性複数 女性単数女性複数
        語幹
        不定詞
        現在分詞
        過去分詞
      4. 語幹が子音で終わる動詞
      5. (起きる)
         男性単数男性複数 女性単数女性複数
        語幹
        不定詞
        現在分詞
        過去分詞
      6. 不規則な過去分詞
      7.  次の動詞の過去分詞は不規則な形になります。最後のは、一般動詞としてのです。
          男性単数 男性複数 女性単数 女性複数
        する
        行く
        与える
        飲む
        取る
        〜になる

    2. 命令形
    3.  サンスクリットと違って命令形は2人称および に対するものしかありません。原則としては、 に対する命令は語幹そのもの、 に対する命令は語幹 に対する命令は語幹です。 その他、下に掲げた不規則な形に注意してください。
       やわらかな命令形として、依頼形があります。 に対する依頼形はありません。 に対する依頼形は不定詞そのもの、 に対する依頼形は、 への命令形 です。 で終わっていますがこれはに変わったりしません。ヒンディー語ではこのはくっつけて、ウルドゥー語では離して書きます。
      起きる(規則変化)
      する
      与える
      飲む
      取る
      ある
      ↑コピュラ動詞としてのには命令形はなく、 (住む)で代用します

    4. 不確定未来形と未来形
    5.  ヒンディー語/ウルドゥー語の未来形には2種類あります。
       1種類目は、願望、期待など話者の不確定な仮想を表わす不確定未来形で、主語の人称と数に従って変化します。
       2種類目は普通の未来形で、不確定未来形よりも確実な話者の確信、期待を表わします。 形式的には不確定未来形に をつけた形であり、依頼形につけるが不変化なのに対して、こちらは (男性単数) (男性複数) (女性) と変化します。 つまり未来形は人称と数ばかりか性にも従うので、ヒンディー語/ウルドゥー語の動詞の中で一番複雑な変化をする部分といえるかもしれません。なお、依頼形につける同様に、ヒンディー語ではくっつけて、ウルドゥー語では離して書きます。
       以下、不確定未来形の変化のみを記します。
      1. 一般動詞
      2.  語尾の表記は、語幹が母音で終わる場合(左)は、ヒンディー語では独立母音形、ウルドゥー語ではハムザをつけて書きますが、語幹が子音で終わる場合(右)は、ヒンディー語では母音記号形、ウルドゥー語ではハムザなしで書きます。発音的には違いはありません。
        母音で終わる語幹
        (食べる)
        子音で終わる語幹
        (起きる)
         単数複数  単数複数
        1人称 1人称
        2人称 2人称
        3人称 3人称
      3. コピュラ動詞
      4.  の未来形はやはり不規則です。は一般動詞としてだけでなく、コピュラ動詞として助動詞的にも使うのでこの変化はしっかり覚えましょう。
         1人称単数形はウルドゥー語とヒンディー語で違います。ウルドゥー語では現在形と区別がありません。
        (〜である・〜がある・〜になる・コピュラ動詞)
         単数複数
        1人称
        2人称
        3人称
      5. その他の不規則動詞
      6. (与える) (取る)
         単数複数  単数複数
        1人称 1人称
        2人称 2人称
        3人称 3人称

        (飲む)
         単数複数
        1人称
        2人称
        3人称

    6. 自動詞、他動詞、使役動詞、二重使役動詞
    7.  (起きる)、(起こす)、(起こさせる)のように、自動詞の語幹にをつけると、他動詞、使役動詞ができます。
       また、(読む、学ぶ)、(読ませる、教える)、(教えさせる)のように、他動詞の語幹にをつけると、使役動詞、二重使役動詞ができます。
       ただし、この際に語幹の母音が変化したり、語尾の形が変化したりするものもありますので、上記のことはあくまでも一般的な傾向ととらえ、自動詞、他動詞、使役動詞、二重使役動詞は、それぞれ別々の単語として一語一語丁寧に覚えていくのが賢明なやり方です。
       また、二重使役動詞といっても、本当に「Aに命じて、Bに〜させる」という意味とは限らず、われわれの頭には単なる使役や他動詞と区別がつかなかったりすることもあります。上記の2つのケースは、左から順に、[自己完結する動作]、[直接的に他に働きかける動作]、[間接的に他に働きかける動作]ととらえると、より自然にとらえられるような気がします。
       それから一般的にウルドゥー語/ヒンディー語では、使役を厳密に使用する傾向があります(日本語では「昨日病院へ行って注射をうった」と平気でいえますが、ウルドゥー語/ヒンディー語では、患者が自分で注射器を握って注射したのでない以上、必ず「注射を打たせた」といわねばなりません)。
       こういうふうに、自動詞−他動詞−使役の感覚が異なるケースがいろいろあるので、やはりそれぞれの動詞とその意味を丁寧に覚えていくべきです。


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