ジャータカ57(1/3)
猿王の本生物語

「これら四つの法を有している人は〜」という詩を含むこの話は、師匠(世尊)がヴェールヴァナ(竹林精舎)に滞在していたとき、(仏の)殺害のためのデーヴァダッタのうろつきについて語ったものである。
実にその時師匠(世尊)は、デーヴァダッタが(仏の)殺害のためにうろついていると聞いて、
「乞食修行者(比丘)たちよ、デーヴァダッタは今(はじめて)私の殺害のために歩き回っているのではなく、以前もまた歩き回ったのだが、その時にも私を(殺害)できなかった」と言って、過去の話に言及した。

昔、ヴァラナシでブラフマダッタ王が国を治めていたとき、菩薩は猿の胎に生まれ、成長にしたがって子馬ほどの大きさになり、力強くなった。独りで川岸に住んでいた。また、その川の中央には、マンゴーやパンの木など多様な種類の果実の木がいっぱい生えた一つの島があった。菩薩は象の力のように力をそなえ、川のこちらの岸から飛び上がり、小島のこちら側には川の中間に頭だけが出た1つの岩があり、そこに(中間の踏み台として)着地し、その後(そこから)飛び上がり、その小島に着地した。そこでさまざまな種類の果物を食べ、夕方には全く同じ方法で戻り、自分の住所に住み、翌日もまた全く同様にした。この方法によってそこで生活をしていた。
さてその時、一匹のワニが夫人とともにその川に住んでいた。彼の妻は、菩薩がこちらからあちらへと行くのを見て、菩薩の心臓の肉に妊婦の異常嗜好を起こし、(夫の)ワニに言った。
「私の旦那様、妊娠しているのでこの猿の王の心臓の肉がほしくなりました」と。
ワニは「美しい人よ、よし、あなたは得るだろう(あなたにさしあげよう)」と言って、「今日の夕方、小島から彼がまさに帰ってくるのを捕らえよう」と言って、頭部だけ出た岩のところに行って横になった。
菩薩は一日中歩き回り、夕方に小島に立って岩を見て、「今この岩は、ふだんよりも高いように思えるが、いったいどういう原因だろうか」と思った。

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