ジャータカ57(2/3)
猿王の本生物語

まことに、菩薩にとっては、水の量と岩の高さがよく知られていたようであり、そこで彼のこういう考えが起こった。
「今日、この川では水が減ってもいないし増えてもいない。しかしながら、この岩は大きいと思われる。おそらくは私を捕らえる目的でワニが横たわっているのだろう」と。
彼は「まずこれを調査しよう」と、まさにそこに立って、岩と話をするかのように、「おい、岩よ」と言っても返事を得ず、三回まで「岩よ」と言った。「岩はどうして返事をしないのだろうか」と。再び猿は彼に「おい岩よ、どうして今日は私に返事をしないのか」と言った。
ワニは「きっと別の日には岩は猿の王に返事をしたのだ。今こいつに返事をしよう」と考えて「おい、猿の王よ、何だ」と言った。
(菩薩)「お前は誰か」と。
(ワニ)「私はワニだ」と。
(菩薩)「お前はどういう理由でここに横になっているのか」と。
(ワニ)「お前の心臓の肉がほしい」と。
菩薩は「私には他に行く道はない。私はこのワニをだまさねばならない」と考えた。そこで彼にこのように言った。「友よ、ワニよ。私はお前に自己を捧げよう。お前は口を開けて、お前の近くに来た時に私を捕らえよ」と。
実に、ワニの目は口が開くとき閉じるものである。彼はその行為を考慮せずに口を開いた。そこでこのワニの目が閉じられた。彼は口を開けて目を閉じて横になった。菩薩はワニがそのような様子をしていることを知って、小島から飛び上がって行って、ワニの頭に近づき(頭を踏んで)、そこから飛び上がり、まるで電光のようにきらめき(すばやく)、反対の岸に降り立った。
ワニは不思議な行為をする彼を見て「この猿の王はとても不思議なことをした」と思って、「おい、猿の王よ、この世界で4つの法を備えた人は敵に打ち勝つものだ。それらすべてがあなたには具わっているようだ」と言って、次の詩句を言った。

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