[サンスクリットページ参考書]

傍目八目−諸参考書の間違い

傍目八目。自分では学力がなくても他人の間違いはよくわかるものです。 サンスクリット関係の参考書を読んでいて気づいた間違いをここにまとめていきます。
これらの言語の参考書は部数がはけないので、 改訂版がいつ出るかわかったものではなく(出なくても不思議ではない)、 間違いがずっと残り続けることでしょう。 こうして間違いをまとめておけば、 孫引きにより間違いが再生産されることもなくなると思われます。 よくいろいろな掲示板で「あの本、間違いが多いからね」などと書いてあったりしますが、 そういう陰口をたたくひまがあったら、私のところにぜひ情報をお教えください。 ここにまとめて、みんなで訂正しながらその参考書を使いましょう。

  1. J.ゴンダ『サンスクリット語初等文法』
  2. ページ行・箇所原文修正提案
    16 8 Sec.13-16 末尾の,,
    66 23(下から2) 複合未来(Periphrastie future) Periphrastie→Periphrastic。単なる凡ミス。
    80 3 。英語版でもこうなっているのでたぶん元からのミスだろう。
    87 23、24(下から3と2) 前文 前分。(2箇所でてくる) ふつうは「前部分」とか「前半」とかいうところを「前分」というヘンな日本語を使うもんだから、 校正者が「前文」だと思ってしまったのだろう。
    122 11 アヴァグラハを表すアポストロフィの前のスペースを削除。 これは実は一語の複合語としないといけない。 英語版ではちゃんとくっついている。 アヴァグラハの前はスペースとは限らないのである。
    128 22(下から5行目) 。 次が母音なんだからじゃなく。 英語版ではちゃんとになっているので、 日本語版の誤植。
    128 25(下から2行目) 。 英語版ではちゃんとになっているので、 日本語版の誤植。
    148 右27 adj. 医学から成る 訳語が不適切。正しくは「医学に通じた」「医学に明るい」など。 荻原梵和では「医学に通暁せる」とある。 ゴンダ文法を訳した鎧先生の訳語はヘンな日本語が多く、 そういうのをいちいちあげているときりがないのだが、 ここは下手な訳というレベル以前の誤訳なのであえて指摘する。 この語は本書のなかでは選文12、p.135の22行目にしか登場しないのだから、 ここの訳語としてふさわしいものでなければ失格である。 つまり「〜な男」という文脈で出てくる。 「医学から成る男」というのが意味をなすだろうか。 もちろん「医学に明るい男」である。 英訳本では 「containing the science of medicine in itself」とある。 「自分自信の中に医学の知識を持っている」である。 ドイツ語がどうなっているかは知らないが、 containから「〜から成る」という訳語が出てきたとすれば、 なるほどうなずけるかもしれない。
    154 左26 名詞なのに性別が書いていない。m. をおぎなっておきたい。 英訳本にはちゃんとある。 日本語版ではそのかわりに(: V.)という英語にない説明があるが、 それを補ったときにうっかり抜けてしまったのだろう。
    174 右27 。 英訳本にはこの語自体が出てこない。 これは選文12に登場する人名であり、 日本語版で親切に追加してあげたのだろうが、 形が間違っているんじゃかえって混乱のもとである。 なお、これはラーマの別名である。 そのことは選文12には註がないのだから、 それもちゃんと語彙集で説明すべき。 現にp.175左20ののほうには「=」と書いているではないか。
    179 右10 (中略)f f→n。明らかに女性名詞のはずがない。 なお、英訳本ではnになっているので、 このミスは日本語版だけのものであろう。
    185 右最後 m. 鵞鳥 鵞鳥→ハンサ鳥。 英訳本でもgoose, ganderとなっているが、 独特の鳥であり、一般にはそのままハンサ鳥と訳す。 現にゴンダ文法の訳者の鎧先生が訳している『ナラ王物語』ではちゃんとハンサ鳥と訳している(岩波文庫p.14など)。 この鳥はインド文学では非常に重要な役割をするので、 鵞鳥と訳してしまうのは問題。 この件については、 長柄行光『サンスクリット文学に於けるHAMSAについて』 (印度学仏教学研究1969.3)に詳しい。 読みたい人はこちら(会員専用)

  3. 斎藤光純『サンスクリット語初等文法摘要』
  4. ページ行・箇所原文修正提案
    170 能動態命令法単数3人称
    176 能動態直説法現在単数1人称
    182 能動態直説法現在単数2人称
    187 表のタイトル (7. U. 砕く) (7. P. 砕く)

  5. 菅沼晃『新・サンスクリットの基礎』
  6. ページ行・箇所原文修正提案
    下447 現在単数2人称

  7. 岩本裕『サンスクリット文法』
  8. ページ行・箇所原文修正提案
    250 左24
    250 左25

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