マハーバーラタ 3-50-11

ナラ王物語1-2/3
デーヴァナーガリーはランマンのリーダーのものをそのまま使用。
入門用に過剰な分かち書きをしているので注意。
すべて韻文、ブルハダシュヴァのセリフなので、[詩]表記および(ブルハダシュヴァ)「」表記を略。

23. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	接	さて
    	代女単対	彼女を
    	名中単処	年齢
    	←過分中単処	得る
    	名女複属	女召使たちの
    	←過分中単主	飾った

    
    日本語訳…… さて、適齢期になって、彼女(ダマヤンティー)に、飾り立てた(百人の)女召使たちが
    備考…… 次の句とセットになっているのでここだけだと訳しにくいし、文法的にも理解しにくい。
    (彼女を)は、次句の(取り巻く)の目的語になっているので対格になっている。
    は処格絶対節。「年齢を得て」というのは、老人になったわけではなく、赤ちゃんだったダマヤンティーがいい大人、結婚適齢期になったということである。
    (飾った)は中性単数で、(女召使たち)が女性複数。性も数も合わないのだが、が属格なのがヒント。そして次句に(百)がある。「百」は中性単数あつかいで、「百個の××」は「××の百」というふうに、××を複数属格にし、百は中性単数のままで、××の本来の格(ここでは主格)は「百」のところで表すわけである。
    
    
24. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名中単主	百
    	名中単主	百
    	名女複属	女友達たちの
    	接	そして
    	副	同様に
    	能過単３	取り巻いた
    	名女単対	(人名)
    	接	〜のごとく

    
    日本語訳…… そして同様に百人の女友達が、まるでシャチー(インドラ神の妃)(に仕えるさま)のように、(ダマヤンティー)を取り巻いていました。
    備考…… ２つの(百)は、２つ重ねて何か特別な意味になっているわけではない。前半は前句の「女召使」、後半はこの句の「女友達」(お供の者たちだろう)にかかるもの。もっとも正確な「百」なのではなかろうから、「数多くの」「数百の」と訳してもいいだろう。
    はふつう反射態のはずだが、ここでは臨時に能動態になっている。たぶん韻律上の配慮だろう。
    
    
25. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	副	そこに
    	副	(過去)
    	反現単３	輝く
    	名女単主	(人名)
    	形幹	すべての
    	名中幹	装飾品
    	←←使過分女単主	飾られた

    
    日本語訳…… そこで、あらゆる装飾品で飾られたバイミー(＝ダマヤンティー)は輝いていました。
    備考…… 「そこで」というのは、前句ならびにこの後に述べられるような、さまざまな装飾品で飾り立てた取り巻きの女召使たちの中でも、ということであろう。
    
    
26. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名女幹	女友達
    	名中単処	中で
    	名女単主	完全無欠の美女
    	名女単主	電光
    	名女単主	稲妻
    	接	〜のように

    
    日本語訳…… 女友達たちの中で完全無欠の美女は電光・稲妻のように(輝いていました)。
    備考…… 前句とあわせて「(飾りたてた)女友達たちの中でも、あらゆる装飾品で飾られた完全無欠の美女であるダマヤンティーは、電光・稲妻のように輝いていました」と訳すとよい。
    
    
27. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	副	非常に
    	名中幹	美貌
    	←過分女単主	手に入れた
    	名女単主	ラクシュミー
    	接	〜のごとく
    	←過分幹	長い
    	名中→形女単主	目

    
    日本語訳…… まことに、美しい容貌をもち、切れ長の目のラクシュミーのようであり、
    備考……
    
    
28. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	副	ない
    	名男複処	神々において
    	副	ない
    	名男複処	夜叉において
    	形女単主	このような
    	形→名女単主	美麗な
    	副	どこ
    	尾	(不定)

    
    日本語訳…… このような美麗な女は、神々においても、夜叉においても、どこにもいませんでした。
    備考…… 〜...は、「〜も...もない」を表す。またが不定代名詞と呼応して否定の意味を強調することはよくあることである。
    
    
29. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名男複属	人間たちにおいて
    	接	さえも
    	接	そして
    	形男複処	他の
    	←過分幹	見られた
    	形女単主	以前の
    	接	または
    	接
    	←過分女単主	聞かれた

    
    日本語訳…… そして他の人間たちにおいてさえも、以前に見られたり聞かれたりしたことはありませんでした。
    備考…… 否定の語がないが、前句からのつながりで否定の意味に解釈する。
    
    
30. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名中幹	心
    	形女単主	苦しめる
    	形女単主	若い
    	名男複属	神々の
    	接	もまた
    	形女単主	美しい

    
    日本語訳…… 神々の心をさえも苦しめる、若く美しい女でありました。
    備考…… 「若い」「美しい」を述語とし、主語はないが、話題のダマヤンティーととって解釈した。
    
    
31. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名男単主	(人名)
    	接	そして
    	名男幹	男
    	名男単主	虎
    	名男複処	世間の人々において
    	形男単主	無比の
    	名女単処	大地において

    
    日本語訳…… そしてナラは虎のような人として、世間の人々の中で、地上において無比であり、
    備考……
    
    
32. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名男単主	カーマ神
    	接	〜のごとく
    	名中単具	容貌によって
    	名男単主	具体的な
    	能過単３	あった
    	副	みずから

    
    日本語訳…… 容貌については、カーマ神がみずから具現化したようでありました。
    備考……
    
    
33. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	代女単属	彼女の
    	名中単処	そばで
    	接	しかし
    	名男単対	(人名)を
    	能完複３	賞賛した
    	名中単従	好奇心から

    
    日本語訳…… 一方、彼女(ダマヤンティー)のそばでは好奇心から人々はナラを賞賛しました。
    備考……
    
    
34. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名男単属	ニシャダ国の王子の
    	名中単処	そばで
    	接	しかし
    	名女単対	(人名)を
    ×２	副	再び

    
    日本語訳…… 他方、ニシャダ国の王子(＝ナラ)のそばで人々は何度も何度もダマヤンティーを(賞賛しました)。
    備考……
    
    
35. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	代男両属	彼ら二人の
    	形幹	見えない
    	名男単主	愛は
    	能ア単３	あった
    	←能現分男両属	聞いている
    	副	絶えず
    	名男複対	美徳を

    
    日本語訳…… (相手の)数々の美徳を絶えず聞いているうち、見えない相手への愛が二人に生じました。
    備考…… は、「二人の〜愛」ととっても通じなくはないが、属格＋「ある、起こる」で、為格のように、「〜にある、〜に起こる」を表す用法がある。
    
    
36. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	副	互いに相手への
    	副
    	名男単呼	(人名)よ
    	代男単主	かの
    	反過単３	増加した
    	名男単主	心に秘めたものが

    
    日本語訳…… クンティー夫人の子(ユディシティラ)よ、互いに相手への、かの、心に秘めた愛が増加したのです。
    備考……
    
    
37. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	頭	否定
    	←能現分男単主	できる
    	名男単主	(人名)は
    	名男単対	愛を
    	副	その後
    	←使不定	支える
    	名中単具	心によって

    
    日本語訳…… その後、心の中で愛をがまんできなくなったナラは、
    備考……
    
    
38. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名中幹	王宮
    	形中単処	〜の近くの
    	名中単処	森において
    	反現単３	座る
    	副	ひそかに
    	←過分男単主	行った

    
    日本語訳…… 王宮近くの森にこっそり行って座りました。
    備考……
    
    
39. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	代男単主	彼は
    	能完単３	見た
    	副	その時
    	名男複対	ハンサ鳥
    	形幹	黄金色/td>
    	←過分男複対	美しく飾られた

    
    日本語訳…… その時彼は、黄金色に美しく飾られたハンサ鳥を見ました。
    備考……
    
    
40. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名中単処	森において
    	←能現分男複属	拡がっている
    	代男複属	彼ら
    	数男単対	一つを
    	能完単３	とらえた
    	名男複属	鳥たちの

    
    日本語訳…… 森を飛び回っている鳥たちのうちの一羽を彼は捕らえました。
    備考……
    
    
41. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	接	すると
    	名男単主	鳥が
    	名女単対	声を
    	能完単３	言った
    	名男単対	(人名)を
    	副	その時

    
    日本語訳…… するとその時、鳥はナラに声を出して言いました。
    備考……
    
    
42. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	←動形男単主	殺されるべき
    	能現単１	私は〜ある
    	副	ない
    	代単属	あなたによって
    	名男単呼	王よ
    	能現単１	私は〜するだろう
    	代単属	あなたのために
    	形→名中単対	気に入ることを

    
    日本語訳…… (鳥)「王よ、あなたは私を殺さないでください。(殺さなければ)私はあなたにいいことをしましょう」
    備考…… は為格ともとれるが、ランマンの注によれば後半の同様に属格であり、どちらも属格の為格的用法ということである。
    
    
43. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名女幹	(人名)
    	名男単処	近くで
    	代単対	あなたを
    	名動能未単１	私は語ろう
    	名男単呼	(人名)よ

    
    日本語訳…… (鳥)「ニシャダ国の王子よ、私はダマヤンティーの近くであなたのことを語りましょう」
    備考…… 次句を先に訳してから、次句のに対応する（そのように）をこちらに補って訳す。
    
    
44. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	接	〜ように
    	代単従	あなたから
    	形男単対	他の
    	名男単対	男を
    	副	ない
    	代女単主	彼女が
    	反未単３	考える
    	副	いつでも
    	副

    
    日本語訳…… 鳥「彼女がいつでもあなた以外に他の男のことを考えないように」
    備考…… 前句にかかる。