[ウルドゥー語/ヒンディー語ページ文法超特急・3]

代名詞

Since 2004/4/29 Last Updated 2006/6/15


  1. 代名詞の格
  2.  代名詞の格は名詞の格に比べて種類が豊富です。
     斜格には単独の形に加え、 後置詞 (〜を、に)がついたときの融合形を別に持っている場合があります。 これらは融合形を使ってもいいし、 後置詞 を分けて言ってもかまいません。 後置詞 を分けて言う場合、 ヒンディー語(デーヴァナーガリー)では原則として前の代名詞と分かち書きせずに書き、 ウルドゥー語(ペルシア文字)では分かち書きして書きます。
    • (例) (「私」の斜格) → または (私に、私を)
     能格とは後置詞 が接続する形です。 は他動詞の過去分詞が述語になるときに、 主語のあとにつける後置詞です (詳しくは動詞の項で説明します)。 サンスクリットでいえば具格(〜によって)に相当します。ヒンディー語では語によって分かち書きしたりしなかったりするので、ここでは をつけた形で示します。
     属格とは「〜の」の意味で、「所有格」と呼ぶ場合もあります。 属格はいわば、 「〜の」の意味の後置詞 が融合した形と言えます。 だからといって、斜格+でもかまわないわけではなく、 必ず属格を使わねばなりません。 よって、後置詞 を使うすべての表現では、代名詞を使う場合、 代名詞の属格+ ではなく、 属格形を使わねばなりません。
     属格は形容詞同様に、 かかる名詞の性・数・格によって、 末尾のが、と変化します (で終わる形容詞の変化)
     主格、斜格、能格には、後置詞 (〜こそ)が融合した形をもつものがあります。 この形を持つ場合、 を別に言っても、融合形を使ってもかまいません。 以下の表でこの項目が空欄の場合は、 をつけて言えばいいわけです。

  3. 人称代名詞
    1.  複数を明らかにする場合、「人びと」という意味の名詞 をあとにつけます。

    2. 1人称代名詞
    3. 1人称(私、われわれ)
       単数複数 
      主格  
        が融合した形
      斜格 基本形
      が融合した形
      が融合した形
      能格  
        が融合した形
      属格 単数主格の男性名詞にかかる場合
      その他の男性名詞にかかる場合
      女性名詞にかかる場合

    4. 2人称代名詞
    5.  2人称単数の は、神あるいは相手をさげすむ場合にしか用いられず、 ふつうはたとえ単数でも、複数形の を用います。 しかしこれも親密な間柄でしか使えず、 より丁寧な表現としては、 を使います。 は文法的には3人称複数になりますが、 相手が1人でもかまいません。
       なお、以下の表の複数形で、 はそれぞれ、 と表記されることもあります(日本の一部の参考書や単語集にもそう表記しています)が、 …のほうが標準的なのでそう書くべきでしょう。
      2人称(おまえ、おまえたち(あなた))
       単数複数 
      主格  
        が融合した形
      斜格 基本形
      が融合した形
      が融合した形
      能格  
        が融合した形
      属格 単数主格の男性名詞にかかる場合
      その他の男性名詞にかかる場合
      女性名詞にかかる場合

      2人称敬体(あなた)※3人称複数扱い
      主格  
      斜格  
      能格  
      属格 単数主格の男性名詞にかかる場合
      その他の男性名詞にかかる場合
      女性名詞にかかる場合

  4. 指示代名詞
  5.  サンスクリット同様、3人称の人称代名詞は特に存在せず、 遠称の指示代名詞(それ、あれ)で代用します。 指示代名詞の主格は発音的には単複同形ですし、 ウルドゥー語では文字上も同形ですが、 ヒンディー語では文字としては書き分けます。 ウルドゥー語でもヒンディー語でも、 この部分はつづりと発音が異なっているので注意してください。
     属格は「この」「あの」ではなく「これの」「あれの」です。 「この」「あの」は主格の をそのまま用います。
    近称の指示代名詞(これ)
     単数複数 
    主格  
      が融合した形
    斜格 基本形
    が融合した形
    が融合した形
    能格

     

      が融合した形
    属格 単数主格の男性名詞にかかる場合
    その他の男性名詞にかかる場合
    女性名詞にかかる場合

    遠称の指示代名詞(それ、あれ)、3人称代名詞(彼(ら)、彼女(ら))
     単数複数 
    主格
    複数形はヒンディー語でも、ウルドゥー語風に と発音される場合もある。
      が融合した形
    斜格 基本形
    が融合した形
    が融合した形
    能格

     

      が融合した形
    属格 単数主格の男性名詞にかかる場合
    その他の男性名詞にかかる場合
    女性名詞にかかる場合

  6. 不定代名詞
  7.  「誰か」「何か」を表わします。 実質的に主格と斜格しかありません。 能格は斜格に が接続した形ですし、 属格は斜格に が接続した形です。 ヒンディー語ではどちらも後置詞の前で分かち書きをします。
    不定代名詞(誰か、何か)
     単数複数 
    主格  
    斜格 ウルドゥー語では とも発音

  8. 疑問代名詞
    1. 「誰」「何」
    2.  主格のみ「誰」と「何」が異なりますが、 それ以外の格では同じになります。 主格以外の形は、近称指示代名詞の頭に をつけた形になっています。
       (何)は文頭で用いて、 「〜か」という疑問文を作るのにも使います。
      疑問代名詞(誰、何)
       単数複数 
      主格
      斜格 基本形
      が融合した形
      が融合した形
      能格

       

        が融合した形
      属格

      単数主格の男性名詞にかかる場合


      その他の男性名詞にかかる場合


      女性名詞にかかる場合

    3. その他
    4. で終わるものは、形容詞的用法をする場合、 例によって (男性斜格と複数)、 (女性)への変化をします。
      どこ
      どちら(方角)
      どちら(選択)
      いつ
      どう
      いくら
      なぜ

  9. 関係代名詞
  10.  主格以外の形は、疑問代名詞のに変えたものです。
     指示代名詞(原則として遠称だがたまに近称もある) と呼応するのが特徴です。
    関係代名詞(〜する人、〜するもの)
     単数複数 
    主格  
    斜格 基本形
    が融合した形
    が融合した形
    能格

     

      が融合した形
    属格
    単数主格の男性名詞にかかる場合


    その他の男性名詞にかかる場合

    女性名詞にかかる場合

  11. 再帰代名詞
  12.  「自分」という意味の言葉です。 主格はで、 敬称の2人称代名詞とまぎらわしいですが、 (私自身が) などという使い方をしている点で判別します。
     属格は で、これがかかる名詞の性・数・格によって、 と変化します。 英語では「私は私の家に行こう」は I will go to my house. といえますが、 ウルドゥー語/ヒンディー語では必ず「私(女)は自分の家へ行こう」 となります。
     属格以外の斜格は で、 「自分で」のような副詞としても使います。 また、を強調するのに、 のような言い方をすることがあります。


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