[サンスクリットページ参考書]

辞書

Since 2004/4/4 Last Updated


辞書の引き方については『菅沼』の下巻p.641-672は必読。 以下のMWアプテ荻原梵和を用いた実例がのっています。
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荻原雲来『梵和大辞典』
1940-1974/1979/1986.編集・刊行=鈴木学術財団.発売=講談社.ISBN4-06-202419-5.A5−1568ページ+補遺71ページ.
 上記の発行年からわかるように複雑な来歴をたどっており、 もとは戦前から分冊刊行され、74年に全16分冊で完成、 その後79年に1冊化され(たしかA4サイズ、いやもっと大きかったか)、 86年にB5版に縮刷化されています。 現在普通に入手できるのはこの形で、25200円。 一般ルートでは入手しにくくなっていますが仏教専門書店では入手できます。 私は箱ナシの古本を13000円で入手しました(2004.2)。
 唯一の梵和辞典。 戦前から出始めたので最初の部分は旧字体で後のほうが新字体だったりします。 基本的に戦前部分のスタイルを踏襲して作成されたため、 最近の辞書のようには語義説明や文法説明が詳しくなく、 結局かなり多くの場合にモニエルなど他の辞書を引きなおすハメになります。 もっとも一応この辞書はマクドネルを下敷きにしているので、 訳語は信頼できないわけじゃありません。(前半が)古めかしいだけです。 やっぱり日本語で説明してくれてるのはありがたいです。 仏教語の漢訳が載っているのがなんといっても便利で、 仏典を読むためにサンスクリットを勉強している人にとってはこれだけでも価値がある。 これは梵英辞典にはかなわぬ芸当ですね。
 さらに、縮刷版は「ハンディ」といえる大きさにぎりぎりおさまっており、 カバンに入れて持ち歩いたり、電車の中でひいたりするのもまぁ苦になりません。 モニエルじゃこうはいかないですからね。
 そんなわけで、 何だかんだ不平をいいつつも、ぜひ持っていたい一冊というわけですね。
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山中元『サンスクリット語−日本語単語集』
2004.国際語学社.ISBN4-87731-221-8.B6−233ページ.3000円+税.
 辞書ではなく単語集。 カバーのうたい文句によれば約5000語を収録しているそうな。 文法書の巻末に、その本に出てくる語彙を集めた語彙集がついているというのは以前からありましたが、こういう頻出単語集はありませんでした。 その意味では大いに歓迎すべきなんですが、ローマナイズが特殊なのと、ABC順になっている点がとても使いにくい。
 巻末の「あとがき」によれば、特殊なローマナイズについては「従来アルファベットの上下に点を打った文字が多く使われていたが、 誤読されやすい欠点があるのでATOKのフォント「東方ヨーロッパ」を流用して替えた」と書いてあるので、意図してそうしているようですね。 でも私には「ATOKのフォントにある文字で代用せざるを得なかった」という弁明にしか読めません。 なぜって、はたしかにdに横線なんですが、はやっぱり点を打った「誤読されやすい」文字を使っているのですから。
 それから、ABC順になっていることについても、「a, b, c…で表された転写文字については、当然アルファベットの配列に改めるべきだと信じている。 読者にはずっと便利なはずである」と書いてますが、これも私には「デーヴァナーガリーの順にソートするテクニックがなかった」という弁明にしか読めません。 なぜってこの人は、前著『サンスクリット文法入門』のまえがきで、 「およそ言語学の図書は該当する国の文字を使わぬ限り、アルファベットでいくら説明しても、意味ないと私は思っている」なんて書いているんですから。 じゃなんでこの単語集ではデーヴァナーガリー使ってないの?
 ねぇ、お願いだから山中さん。 この単語集の原稿文書ファイルちょうだい。 そしたら通常のサンスクリットローマ字フォントに直し、 デーヴァナーガリーの順にソートしてあげるからさ。 そしたらこの本は100倍価値が出たと思うよ。
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平岡昇修『初心者のためのサンスクリット辞典』
2005.世界聖典刊行協会.ISBN8-88110-129-3.A5−252ページ.950円+税.
 「まえがき」によれば「『サンスクリット虎の巻』の後半部を独立した安価な辞典として出版することにした」とのこと。この事情を知らずに本書をとると、いきなり第5章から始まっていたり、p.12の次がいきなりp.471になったりするので「落丁か」と思ってしまうかもしれませんが、旧著の後半部の抜き刷りという理由でそうなっているのです。
 『サンスクリット虎の巻』の後半部は、語彙集としても便利ですが、逆サンディ表(サンディされた現実のテキストからもとの形の可能性を調べる)や動詞活用辞典(動詞の語幹などから語根をひく)が便利で、本を解体して後半だけをバラして持ち歩きたいほどでした。まさにそういう形の本が、しかも非常に安い値段で出されたわけです。題名には「初心者のための」とありますが、中級者になっても動詞語根を調べるのはけっこう大変なので、初心者から中級者まで広く役立つはずです。できれば、抜き刷りのついでに語形変化表などもつけてくれればもっと便利だったと思いますが、辻文法などとこの辞典をセットにして持ち歩けば、出先でもサンスクリットのリーディングに役立つことでしょう。
 著者の平岡昇修氏のサイト「サンスクリットへの誘い」もご参照ください。
ブックマーク=#mddic

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Arthur Anthony Macdonell : A Practical Sanskrit Dictionary
Oxford Univ.Press, 1924.A4−382ページ.
 書名では不明確かもしれませんが梵英辞典です。菅沼先生の『サンスクリットの基礎と実践』には、次のMonier=Williams(モニエル)の辞書とあわせて「上記2辞典は、『マクドネル』『モニエル』と略称され、サンスクリット学習者はこれら2つを具えるのがふつうである」なんて書いてあったので、「ふつうのサンスクリット学習者」になるために買ってみました(笑)。 当初私は、渡辺照宏さんが岩波新書の『外国語の学び方』の中で「これ(モニエル)よりも小さい辞典ではじきに役に立たなくなります」と書いてあるのをなるほどと思っていて、「大は小をかねる」で、モニエルがあればこれなんか不要だと思ってました。 版型はモニエル同様にA4とバカでかいので決してコンサイスではないし、昔はともかく今はモニエルも安く手に入るので、モニエルとほとんど同額(左の写真はインドのMunshiram Manoharial Publishersでリプリントされたもので、Rs.600)の本書はちょっと中途半端かなと思ってました。が、確かにA4でバカでかいんですが、薄っぺらいので一応片手で持つことができます。今ではけっこう親しい存在になりました。だまされたと思ってこちらも買ってみてはいかがでしょう。
 ただし、ローマナイズは猛烈に特殊ですので要注意。長音は山形記号。それから最初、なんでcがないんだろうと悩んでいたら、kのイタリックでした。同様になどの反舌音もイタリックで表わしてます。じゃはというと、はsのイタリック、はshだっていうのがちっとも体系的じゃないですね。マグドネルの文法書はごく普通のローマナイズなのに何でだろう?
ブックマーク=#mwse


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Monier-Williams : A Sanskrit-English Dictionary
Oxford Univ.Press, 1899.A4−1333ページ.
 定番の梵英辞典です。 見出しのみデーヴァナーガリーで例文などはローマ字、 しかもその見出しにもちゃんとローマ字が併記されているので、 デーヴァナーガリーの読み方が危うくても使えます。 ただローマ字はちょいと特殊なんで注意。
 オリジナルは神田神保町の洋書店の相場じゃ15000円ぐらいですが、インドでさまざまリプリントされており、はるかに安く購入できます。左の写真はインドのMotilal Banarsidassでリプリントされたもので、Rs.650ですから日本の各書店では4000円程度で入手できます。これはA4版でかなり分厚いものですが、最近出たものにはもっとスリムなものがあります。またコンパクト版(B5)もありますし、純正品の香港版(純正品と同等ながら安価なもの)もあったりするので、インド書籍取扱書店でいろいろ探してみてください。
 なお、この辞書は電子化されてWEB上で引くこともできます。 また、http://www.ibiblio.org/sripedia/ebooks/mw/では何と全ページ画像ファイルの形でアップされていたりします。
 また、このモニエルの辞書を全ページスキャンして簡単な検索プログラムをつけたCD−ROMがインドで販売されており、通販で入手することが可能です(写真下。問い合わせ先は→Matchless-Gifts.com)。また、このCD−ROMは穂高書店でも取り扱いをしている(2006/6現在)ようなので、同書店または他のインド書籍取扱書店で問い合わせてみるといいでしょう。
 主要部分のデータをテキストファイル化したもの、およびWindows(95以上なら可)用の簡単な検索プログラムが無料配布されています。入手先は→こちら)。
 また、EPWING化されたテキストファイルがこちらで入手できますので、これをDDWin、EBWinなどのEPWINGビューワで持ちいれば電子辞書として使うことができます。
ブックマーク=#aps1



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V.S.Apte : The Practical Sanskrit-English Dictionary Revised & Enlarged Edition
Poona, 1890.B6−1768ページ+付録112ページ(左の黒いほう).B5−1160ページ(左の赤いほう).
 MWとならんで広く使われている辞典。 私はまだ梵英辞典の性格の違いを論ずることができるほどの学力がありませんので、 「仏典の引用は全然ないけど、文学からの引用が非常に豊富な辞書」という、 巷間言われている評価を書くにとどめます。 サンスクリットはすべてデーヴァナーガリーで、一切ローマ字化されていないので、デーヴァナーガリーが読めないとこの辞書は使えません。
 アプテは19世紀末のインドの教育者で、 当時高価だったMWを学生がなかなか使えないので廉価な辞書を作ったんだそうですが、 いまじゃMWもアプテも似たような値段で買うことができます。 それからこの辞書もMW同様にWEBで引くことが出来ますが、例文は全然ありません。
 それから、アプテの作った梵英辞典は2種類あるので注意(Concise〜を入れれば3種類だが除く)。 まず、The Student's Sanskrit-English Dictionaryというのは、学生用に例文の量を大幅に減らした廉価版なんですが、 いまでは大本のThe Practical 〜が廉価でしかも縮刷されてハンディになっているのですから、The Students 〜を買う意味はあんまりないと思います(一応売ってる)。
 さらに、実はThe Practical 〜にも2種類あり、Revised & Enlarged Edition(つまりは改訂増補版)とあるのとそうなってないのとです。 大きな違いは巻末の付録でして、下のほうには付録があんまりついていません。 買うならこの改訂増補版にすべきです。
 左の写真はインドのMotilal Banarsidassがリプリントしたやつですが、 上の黒いのが改訂増補版、下の赤いのがそうでないやつです。 どちらも同時に出回っているので注意。 まとめると、
 The Practical で始まる。
 ・Revised & Enlarged Editionと書いてある。

 なお、臨川書店から『梵英辞典』というタイトルで14700円で出ているのはこの条件を満たすものです。
ブックマーク=#bhgd

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Franklin Edgerton : Buddhist Hybrid Sanskrit Grammar and Dictionary, 2 vols.
Yale Univ Press, 1953.A4−(Vol.I)239ページ+(Vol.II)627ページ.
 仏教サンスクリットの文法と辞典(梵英)の2冊セット(分冊不可)。私が持っているのはニューデリーのMunshiram Manoharial PublishersでリプリントされRs.1400で売られているもの。単純に掛け算すると(Re.1=6円)8400円のはずだけどもっと安く、たしか7000円くらいで売ってました。
 Vol.1の文法書のほうは古典サンスクリットとの違いという形で説明しているので、まずは古典サンスクリットを勉強してからでないと使えません。Vol.2の辞書も単独の辞書としては語数が少ないので、他の辞書と併用することになります。仏教サンスクリットは古典サンスクリットと違うからといって、それだけ勉強するわけにもいかないということですね。
 なお、著者エジャートンが仏教文献と仏教サンスクリットの要点をまとめた講義録が邦訳されています(久留宮円秀訳『仏典のことば−仏教混淆梵語十講』)。まずはこれを一読することをお勧めします。
ブックマーク=#mwes

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Monier-Williams : A Dictionary English and Sanskrit
1982. Delhi.A4−860ページ.
 梵作文用に英梵辞典を一つ用意しておくといいでしょう。
 なお、梵英のほうはローマ字が併記されていますが、英梵のほうはデーヴァナーガリーのみです。 その意味で、デーヴァナーガリーになれていない人は、WEB版のほうが便利かもしれません。 それから、一つの英単語について訳語がいっぱい載ってますが、 説明は基本的にないので、 意味の細かい違いは梵英で調べなおす必要があります。
 左の写真はインドのMotilal Banarsidassがリプリントしたもので、A4よりちょい大きい版型ですが、他社のにはもう少しコンパクトな版もあります。
ブックマーク=#apes

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V.S.Apte : The Student's English-Sanskrit Dictionary
1884. Poona.A5−501ページ.
 アプテの梵英は3種類ありますが(The Practical〜の改訂増補の有無を入れれば4種類)、英梵はこれしかありません。 The Students's〜とあることからわかるように、A5版501ページのちゃちな辞書ですが、 ハンディだし、英梵はどうせ梵英でたしかめなきゃいかんし、 梵英同様にデーヴァナーガリーしかないけどMW英梵だってそうだし、 そう考えるとMW英梵より便利かもしれません。
 左の写真はインドのMotilal BanarsidassのリプリントでRs.175。 1000円ちょいですね。
ブックマーク=#cshe

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A.K.Mishara & M.K.Pathak : Concise Sanskrit-English-Hindi & English-Sanskrit-Hindi Dictionary
2004. Bharatiya Kala Prakashan(Delhi).A5−142ページ.
 たった142ページしかないのに梵英と英梵が入っているというわけで、辞書というより語彙集。 こんなんじゃ実用的価値はありませんが、ヒンディー語が併記されているんで買ってみました。 ヒンディー語も勉強している人には何かの役にたつかもしれません。 ヒンディー語はむろんのことサンスクリットもオールデーヴァナーガリーです。 太字がサンスクリットで細字がヒンディーという区別をしています。 2004年だから出たばっかりですね。 Rs.70。 420円。


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