般若心経・小本(2)
できる限り仏教専門用語訳を排して訳してみた。 宗教・哲学的な意味はまったく考えていない。
語(連声前)
説明
語義
副
ない
名女単主
知識
副
ない
頭
〜ない
名女単主
知識
副
ない
名幹
知識
名男単主
滅亡
副
ない
頭
〜ない
名幹
知識
名男単主
滅亡
日本語訳
…… 知識もないし、知識がないこともないし、 知識の滅亡もないし、知識の不滅もない。
備考
…… 玄奘訳の「無無明亦無無明尽」に相当。 冒頭の「知識(=悟り、明)もないし」や、 3番目の「知識の滅亡もないし」にあたる部分が玄奘訳にない。
語(連声前)
説明
語義
接
〜までも
副
ない
名女幹
老い
名中単主
死
副
ない
名女幹
老い
名中単主
死
名男単主
滅亡
日本語訳
…… はては老いて死ぬこともなく、老いて死ぬことの滅亡もない。
備考
…… 玄奘訳の「乃至無老死、亦無老死尽」に相当。
が並列複合語(ドゥバンドゥバ)になっていないので「老いや死」でなく「老いて死ぬ」にしておいた。
語(連声前)
説明
語義
副
ない
名中幹
不幸
名男幹
結合
名男幹
破壊
名男(複合語のため)複主
道
副
ない
名中主
知識
副
ない
名女主
取得
日本語訳
…… 不幸も結合も破壊も道もなく、知識もなく、取得もない。
備考
…… 玄奘訳の「無苦集滅道、無智亦無得」に相当。
語(連声前)
説明
語義
副
それゆえ
頭
〜ない
名中単従
取得によって
名男複属
菩薩たちの
名女単対
般若波羅蜜多を
絶
頼って
日本語訳
…… それゆえ、得られないということのために、 菩薩たちの智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)に頼って、
備考
…… 玄奘訳の「以無所得故、菩提薩
、依般若波羅蜜多故」に相当。 主語がないためいろいろな解釈がなされている部分である。 多くは、「人は誰でも」が主語だという説と、 「菩薩たち」は属格だが、絶対詞
への意味上の主語になっているのだという説であろう。
語(連声前)
説明
語義
能現単3
楽しく歩く
頭
〜ない
名中幹
心
形男単主
おおう
日本語訳
…… 心がおおわれることなく楽しく行く。
備考
…… 玄奘訳の「心無
礙」に相当。「楽しく行く」にあたる語ナシ。
語(連声前)
説明
語義
名中幹
心
名中幹
おおい
名中単従
ないことによって
頭
〜ない
←
過分男単主
恐れる
名男幹
転倒、誤り
←
過分男単主
超越する
形幹
専念する
名中→形男単主
涅槃
日本語訳
…… 心に覆いがないことによって怖れず、転倒を超越して涅槃に専念している。
備考
…… 玄奘訳の 「無
礙故、 無有恐怖、遠離(一切)顛倒夢想、究竟涅槃」に相当。
語(連声前)
説明
語義
数幹
3
名男幹
時間
←
過分男複主
留まる
形幹
すべての
名男複主
仏たちは
名女単対
般若波羅蜜多を
日本語訳
…… 三時(過去、現在、未来)に留まっている仏たちはみな、智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)
備考
…… 玄奘訳の「三世諸仏、依般若波羅蜜多故」に相当。 ただし「依」と「故」は次文。
語(連声前)
説明
語義
絶
頼って
形女単対
最も優れた
形幹
正しい
名女単対
悟り(を)
←
過分男複主
完全に悟った
日本語訳
…… 〜に頼って、正しい悟りを完全に悟った。
備考
…… 玄奘訳の「依般若波羅蜜多故、 得阿耨多羅三藐三菩提」に相当。 ただし「般若波羅蜜多」は前文。
語(連声前)
説明
語義
副
それゆえ
←
動形中単主
知られるべき
名女幹
般若波羅蜜多
形幹
大きい
名男単主
呪文は
日本語訳
…… それゆえ人は知るべきだ。智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)の偉大なる呪文は〜
備考
…… 玄奘訳の「故知、般若波羅蜜多呪、是大神咒」に相当。
語(連声前)
説明
語義
形幹
大きい
名女幹
知識
名男単主
呪文は
形幹
最も優れた
名男単主
呪文は
頭
〜ない
形幹
同じ
形幹
同じ
名男単主
呪文は
形幹
すべての
名中
苦しみ
形男単主
消す
日本語訳
…… 偉大な知識の呪文であり、最も優れた呪文であり、 同等のものがない呪文であり、 あらゆる苦しみをいやすものである。
備考
…… 玄奘訳の「是大明咒、是無上咒、是無等等咒、能除一切苦」に相当。
語(連声前)
説明
語義
名中単主
真実(は)
名中単従
偽りがないことから
名女単処
般若波羅蜜多において
←
過分男単主
言う
名男単主
呪文
日本語訳
…… 偽りがないから真実であり、 智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)を意味して説かれた呪文である。
備考
…… 玄奘訳の「真実不虚故、説般若波羅蜜多咒」に相当。 処格は「〜という意味で」という意味あり。
語(連声前)
説明
語義
接
すなわち
接
〜のとおり
日本語訳
…… すなわち次のように。
備考
…… 玄奘訳の「即説咒曰」に相当。
語(連声前)
説明
語義
←
過分中処
到達において
←
過分中処
到達において
名中幹
彼岸
←
過分中処
到達において
名中幹
彼岸
←
過分中処
完全な到達において
名女単主(?)
悟り
間
幸あれ
日本語訳
…… 彼岸への完全な到達において悟りがある。幸あれ
備考
…… 玄奘訳の「掲(羯)諦、掲諦、波羅掲諦、波羅僧掲諦、菩提娑婆訶」に相当。 どう解釈しても文法的に矛盾が起きるところなので諸説あり。 ここでは一例を示すのみ。他説にくらべて優位を主張するものではない。 一番多い「異説」は、
を
の女性単数「到達した者」の呼格、 ないし
(歩行、行くこと、出口、よりどころ)という女性名詞の単数呼格とするもの。 また
も呼格とする説が多い。
はふつうは「集まる」という意味。
語(連声前)
説明
語義
接
〜と
名女幹
般若波羅蜜多
名中単主
心が
←
過分中単主
完成された
日本語訳
…… このように、「智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)の心」が完成された。
備考
…… 玄奘訳では対応箇所がないが「般若波羅蜜多心経」がしいていえば対応箇所。