法華経如来寿量品第十六・自我偈(1)

デーヴァナーガリーはBibliotheca Buddica 10. のものをそのまま１行ずつ用いた。 (p.323 7〜p.324 4)
すべて詩なので[詩]表示を省略。 方言的な語句の場合、 「語(連声前)」欄は上が元の形、＝で示したのが標準的な言い方。

1. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   ＝	→〜頭＋形女複主	考えられない
   	名男幹	カルパ
   	数幹	千
   	名女複主	千万
   	代女複属	それの
   	名中単主	尺度が
   	副	ない
   ＝	副	決して
   	受現単３	知られる

   
   日本語訳…… その尺度を決して知ることができない、考えられない数百億カルパ(の昔である)
   備考…… この文全体が次文前半に対する述語になっている。
   
   
2. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	→過分女単主	得られた
   	代単具	私によって
   ＝	代女単主	この
   	副	その時
   	名中幹	第一の
   	名女単主	悟りが
   	名男単対	教えを
   	接	そして
   ＝	←使能現単１	指示する
   ＝	代男単主	私は
   	形幹	常の
   	名男単対→副	時

   
   日本語訳…… 私がこの第一の悟りを得たのは(〜数百億カルパの昔である)。 そしてずっと、私は教えを示している。
   備考…… ここまでクーマラジーヴァ(鳩摩羅什。以下Ｋ)訳 「自我得仏来、所経諸劫数、無量百千万、億載阿僧祇」に相当。 以下、各句末（つまりこのページのレイアウトでは偶数番号末）にＫ訳を書く。
   
   
3. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   ＝	←使能現単１	教化する
   	形幹	多くの
   	名男複対	菩薩たちを
   ＝	名女単処	覚りにおいて
   ＝	名中単処	知識において
   ＝	←使能現単１	立たせる、確立させる
   	接	そして
   	副	まさに

   
   日本語訳…… 私は多くの菩薩たちを教化し、そしてまさに悟りと知識の状態に立たせた。
   備考…… 版本のを荻原本でに校訂。
   はの単数処格(エジャトン8.63)。 また、使役動詞や名詞起源動詞のというのもよく見かける(エジャトン28.46)。
   
   
4. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   ＝	名男複属	衆生たちの
   	名女幹	最高数(一千万)
   	数(名中)→形男単対	千億の
   	形男複対	多くの
   	←使能現単１	完成させる
   	形幹	多くの
   	名男幹	カルパ(長時間)
   	名女複主	最高数(一千万)

   
   日本語訳…… 何億カルパもの間、何億という多くの衆生たちを私は成熟させている。
   備考…… Ｋ「常説法教化、無数億衆生、令入於仏道、爾来無量劫」。
   
   
5. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	名中幹	消滅、涅槃
   	名女単対	(俳優の)役割を
   ＝	接	そして
   	使能現単１	示す
   ＝	名男幹＋副	指導・のために
   ＝	名男複属	衆生の
   	能現単１	言う
   	名男単対	巧妙な方法(方便)を

   
   日本語訳…… そして私は、衆生の指導のために消滅する演技を示して、巧妙な方法を説く。
   備考……
   
   
6. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	副	ない
   	接	そして
   	接	にもかかわらず
   	能現単１	吹き消される
   ＝	代単主	私は
   ＝	代男単処	その
   	名男単処	時に
   	副	この世に
   	副	まさに
   ＝	接	そして
   ＝	名男単対	教えを
   	使能現単１	示す

   
   日本語訳…… にもかかわらず私は消滅することなく、まさにこの時この世において教えを示している。
   備考…… Ｋ「方便現涅槃、而実不滅度、常住此説法」
   
   
7. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	副	そこで
   	接	もまた
   	接	そして
   	名男単対	自己を
   ＝	←使能現単１	守らせる→守る
   	形男複対	すべての
   	接	そして
   ＝	名男複対	衆生を
   	副	そのように
   	副	まさに
   	接	そして
   	代単主	私は

   
   日本語訳…… そして私はそこ(＝この世)で自己を守り、そしてすべての衆生をやはり守っている。
   備考…… 荻原・土田はをすでにに改めている。 またその次に＝を補っている。 とすると訳は「衆生をも」ということになろう。
   
   
8. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	形幹	転倒した
   ＝	名女→形男複主	理性
   	接	そして
   	名男複主	人々は
   	←過分男複主	錯乱した
   	副	そこで
   	副	まさに
   ＝	能現複３	いる
   	副	ない
   ＝	能現複３	見る
   	代単対	私を

   
   日本語訳…… そして、理性が転倒し錯乱した人々は、私を見ることなく、 まさにそこ(＝元通りの状態)にいる。
   備考…… Ｋ「我常住於此、以諸神通力、令顛倒衆生、雖近而不見」
   
   
9. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	過分男単対	消えたのを
   	絶	見て
   	代単属	私の
   	名男幹＋名男単対	自己・存在を
   ＝	名男単対	身体要素において
   	名女単対	崇敬を
   	形女単対	種々の
   	能現複３	する

   
   日本語訳…… 私の自己の存在（肉体）が消えたのを見て、 彼らは身体要素において（遺骨に対して）種々の崇敬をする。
   備考……
   
   
10. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	代単対	私を
    	接	そして
    ＝	←頭＋能現分男複主	見ない
    ＝	←使能現複３	生む
    	名女単対	欲望を
    	接	かくて
    	形幹＋尾中単主	まっすぐな
    ＝	名中単主	心が
    ＝	能現単３	生じる
    	代男複属	彼らの

    
    日本語訳…… そして私を見ずに、(見たいという)欲望を起こす。かくて彼らのまっすぐな心が生じる。
    備考…… Ｋ「衆見我滅度、広供養舍利、咸皆懐恋慕、而生渇仰心」
    荻原・土田本では部分をとしている。
    
    
11. 
    
    
    

    いまここ

    語(連声前)	説明	語義
    ＝	形男複主	まっすぐな
    	接	〜の時
    	代男複主	彼らが
    	形幹	優しい
    	名中→形男複主	柔和さ→柔和な
    	接	そして
    	←過分幹	放棄された
    	名男→形男複主	欲望
    	接	そして
    	能現複３	ある
    	名男複主	衆生が

    
    日本語訳…… 衆生がまっすぐで優しく柔和な心になり、欲望を捨てたときに、
    備考……
    
    
12. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	接	かくて
    本来	代単主	私は
    	形幹	声聞
    ＝	名男単対	団体を
    	絶	作って
    ＝	名男単対	自己を
    ＝	←使能現単１	見せる
    ＝	代単主	私は
    	名男単処	(山名)に

    
    日本語訳…… その時に私はグルドラクータ山に声聞の団体を作って自己を見せる。
    備考…… Ｋ「衆生既信伏、質直意柔軟、一心欲見仏、不自惜身命、時我及衆僧、倶出霊鷲山」