般若心経・大本(2)
できる限り仏教専門用語訳を排して訳してみた。 宗教・哲学的な意味はまったく考えていない。
語(連声前)
説明
語義
副
このように
名男単呼
(名)よ
形幹
すべての
名男複主
徳性は
名女幹
空の状態
形男複主
〜の特徴をもつ
日本語訳
…… シャーリプトラよ、このように、すべての徳性は、空の状態という特徴を持っており、
備考
……
の部分は、この写本の書き手のミス。 これ以降しばらく
という語尾が続くので、 うっかりここも
にしてしまったのだろう。 ここだけは次が
なのだから
ないし
とならねばならない。 岩波本でも注釈なく
としている。
語(連声前)
説明
語義
頭
〜ない
←
過分男複主
生じる
頭
〜ない
←
過分男複主
消滅させられる
頭
〜ない
名中幹
汚物
頭
〜ない
形男複主
汚れない
頭
〜ない
形男複主
より少ない
頭
〜ない
(←
)
過分男複主
満たされた
日本語訳
…… 生じないし、消滅しないし、汚物はないし、純粋でもないし、 より少なくもならないし、満たされることもない。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
副
それゆえに
副
その時
名男単呼
(名)よ
名女単処
空の状態において
副
ない
名中単主
形
日本語訳
…… シャーリプトラよ、それゆえにその時、空の状態においては、形はない(し〜、)
備考
……
語(連声前)
説明
語義
副
ない
名女複主
知覚
副
ない
名女複主
知識
副
ない
名男複主
浄化
副
ない
名中単主
識別
日本語訳
…… 知覚もないし、知識もないし、浄化の行もないし、識別もない。
備考
…… 最初の2つは女性単数ととることもできる。
語(連声前)
説明
語義
副
ない
名中単主
目
副
ない
名中単主
耳
副
ない
名中単主
鼻
副
ない
名女単主
舌
副
ない
名男単主
身体
副
ない
名中単主
心
日本語訳
…… 目もなく耳もなく鼻もなく舌もなく身体もなく心もなく、
備考
……
語(連声前)
説明
語義
副
ない
名中単主
形
副
ない
名男単主
音
副
ない
名男単主
なおい
副
ない
名男単主
味
副
ない
←
動形中単主
触れられるべきもの
副
ない
名男複主
徳性
日本語訳
…… 形もなく音もなくにおいもなく味もなく触れられるべきものなくも徳性もない。
備考
…… 最後の
は、 本来単数の
(
)となるべきところ。 小本ではここらへんがドゥヴァンドゥヴァの複合語になっているので、 最後が複数になる必然性があるのだが、 大本では一語一語くぎっており、いままでずっと単数できているのだから。 意味的にも複数になる必然性がない。
語(連声前)
説明
語義
副
ない
名中幹
目
名男単主
要素
接
〜までも
副
ない
名中幹
心
名男単主
要素
副
ない
名男幹
徳性
名男単主
要素
副
ない
名中幹
心
名中幹
知識
名男単主
要素
日本語訳
…… 目の要素もないし、はては心の要素もなく徳性の要素もなく心や知識の要素もない。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
副
ない
名女単主
知識
副
ない
頭
〜ない
名女単主
知識
副
ない
名男単主
@@
接
〜までも
副
ない
名女幹
老い
名中単主
死
副
ない
名中単主
死
名男単主
滅亡
日本語訳
…… 知識もないし、知識がないこともないし、 はては老いて死ぬこともなく、老いて死ぬことの滅亡もない。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
副
ない
名中幹
不幸
名男幹
結合
名男幹
破壊
名男(複合語のため)複主
道
副
ない
名中主
知識
副
ない
名女主
取得
副
ない
頭
〜ない
名女主
取得
日本語訳
…… 不幸も結合も破壊も道もなく、知識もなく、取得もなく、取得しないこともない。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
副
それゆえ
名男単呼
(人名)(よ)
頭
〜ない
名中単具
取得によって
名男複属
菩薩たちの
絶
頼って
日本語訳
…… それゆえ、得られないということのために、 菩薩たちの智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)に頼って、
備考
…… 小本との違いは2語目が従格か具格かということだけ。
語(連声前)
説明
語義
能現単3
楽しく歩く
頭
〜ない
名中幹
心
形男単主
おおう
日本語訳
…… 心がおおわれることなく楽しく行く。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
名中幹
心
名中幹
おおい
名中単従
ないことによって
頭
〜ない
←
過分男単主
恐れる
名男幹
転倒、誤り
←
過分男単主
超越する
形幹
専念する
名中→形男単主
涅槃
日本語訳
…… 心に覆いがないことによって怖れず、転倒を超越して涅槃に専念している。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
数幹
3
名男幹
時間
←
過分男複主
留まる
形幹
すべての
名男複主
仏たちは
名女単対
般若波羅蜜多を
日本語訳
…… 三時(過去、現在、未来)に留まっている仏たちはみな、智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)
備考
…… 冒頭の語は本来なら
とならねばならない。この文法ミスさえなければ小本とまったく同じなのに!
語(連声前)
説明
語義
絶
頼って
形女単対
最も優れた
形幹
正しい
名女単対
悟り(を)
←
過分男複主
完全に悟った
日本語訳
…… 〜に頼って、正しい悟りを完全に悟った。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
副
それゆえ
←
動形中単主
知られるべき
名女幹
般若波羅蜜多
形幹
大きい
名男単主
呪文は
日本語訳
…… それゆえ人は知るべきだ。智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)の偉大なる呪文は〜
備考
……
語(連声前)
説明
語義
形幹
大きい
名女幹
知識
名男単主
呪文は
形幹
最も優れた
名男単主
呪文は
頭
〜ない
形幹
同じ
形幹
同じ
名男単主
呪文は
形幹
すべての
名中
苦しみ
形男単主
消す
名男単主
呪文は
日本語訳
…… 偉大な知識の呪文であり、最も優れた呪文であり、 同等のものがない呪文であり、 あらゆる苦しみをいやす呪文である。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
名中単主
真実(は)
名中単従
偽りがないことから
名女単処
般若波羅蜜多において
←
過分男単主
言う
名男単主
呪文
日本語訳
…… 偽りがないから真実であり、 智慧の彼岸の到達(般若波羅蜜多)を意味して説かれた呪文である。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
接
すなわち
接
〜のとおり
日本語訳
…… すなわち次のように。
備考
……
語(連声前)
説明
語義
←
過分中処
到達において
←
過分中処
到達において
名中幹
彼岸
←
過分中処
到達において
名中幹
彼岸
←
過分中処
完全な到達において
名女単主(?)
悟り
間
幸あれ
日本語訳
…… 彼岸への完全な到達において悟りがある。幸あれ
備考
…… どう解釈しても文法的に矛盾が起きるところなので諸説あり。 ここでは一例を示すのみ。他説にくらべて優位を主張するものではない。 一番多い「異説」は、
を
の女性単数「到達した者」の呼格、 ないし
(歩行、行くこと、出口、よりどころ)という女性名詞の単数呼格とするもの。 また
も呼格とする説が多い。
はふつうは「集まる」という意味。